蝉の泉

先日 東池袋にある

顧問弁護士の事務所を

訪ねた時のこと

 

地下鉄の改札をくぐり

エスカレーターで

地上に出ると

 

目の前は

キラキラ輝く

高層ビル群が聳え立ち

 

僕は

狭い空を

見上げながら

 

何か大都会という

極度に人工的な空間に対する

圧迫感を感じていました

 

ところが

右に左に

さまざまな色の

コンクリートの壁を

眺めながら

 

31℃の

熱帯ロードを歩いていると

 

騒がしいのだけれど

懐かしい騒音が

耳に飛び込んで来ました

 

あれ?

なんだっけ? この音?

 

まさか

この高層ビル群の中に

いるはずもないと

思っていたからか

 

その騒音が

セミの声だと

ちょっと遅れて

気がついたのでした

 

セミが鳴いてる・・・

こんなにたくさん

 

どこから聴こえるのだろうと

少し足早に

喧騒の居場所に

近づくと

 

ビルとビルの狭間に

30メートルくらいの

小さな公園が

こしらえてあって

 

その公園の周りを

幾本かの広葉樹が

取り囲んでいました

 

セミが

こんなところに

樹が

育ってくれていて・・・

 

ああ ありがたい

 

自分が助かったかのような

気持ちになって

 

葉の生い茂った樹々を見上げ

どこにいるのかは

見えないセミを想い

 

僕は

一緒に歩いてきた

管理課長とともに

弁護士さんが入っている

高いビルを登って行きました

 

先生

こんなところに

あんなにセミが

生きているんですね

 

ええ

そうなんですよ

騒がしくっていいんですが

毎日だと

ちょっとうるさくってね・・・

 

僕は笑顔でうなずきました